[回答]
透析をお受けになっている方の出産例について、きちんとした統計は ありませんが、1996年に東京女子医大の東間先生という先生が 172例の妊娠例を報告しています。
この報告に入らなかった方がいるでしょうし、妊娠はしても出産に 至らなかった方もいるものと考えられます。
2002年の現在では、200例をこえたくらいではないかと私は 推測しています。
当院でも、妊娠・出産をされた患者さんがおいでです。
妊娠する前から、当院と近隣の産婦人科、それに総合病院の 腎臓内科・産婦人科・小児科の合わせて5つの科で連絡を取り合って、 十分に準備をした上での計画妊娠・計画出産でした。
出産までの経過を、当院での経験にそってお話しをします。 まず、妊娠から月日が経過すると、おなかの中で赤ちゃんが大きくなりますから、 それに合わせてドライウェイトを調節しなければなりません。
あまりドライウェイトを大きくしすぎると、心臓に負担がかかったり 「羊水過多」という合併症を生じたりしますから、慎重に決定する必要があります。
透析をお受けになっている方の妊娠の場合には赤ちゃんの発育が 十分でない(いわゆる未熟児で生まれる)ことが多いことが知られています。
この原因の主たるものは尿毒素のためと思われますから十分に毒素を取り除くために、 透析時間を伸ばしていく必要があります。
最終的には一回5時間、週6回透析が行われました。
出産ですが、赤ちゃんへの負担をなるべく少なくする目的から 産婦人科の主治医は帝王切開を選択しました。
しかし、通常の経膣分娩の報告もありますから、必ず帝王切開になってしまう、 とは限らないと思います。
上記のようにいろいろな工夫をしても、赤ちゃんは 未熟児(現在は低体重児と呼ばれます)でしたので、 NICU(小児科の集中治療室)に入院となりました。 退院まで3か月近くかかったと記憶しています。
妊娠・出産には、ご家族と、医療スタッフの協力が何よりも必要です。
ご家族、主治医の方とよくご相談されてください。
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