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透析Q&A

  • 執筆者の写真いい透析ドットコム

[Q55]腎機能の保存療法と人工透析では、どちらの方が負担が軽いのでしょうか?


 

[回答]


とても難しいご質問です。


私たち腎臓医は、何とかして血液透析をさけるように治療を進めたいと 考えているのです。


腎臓のはたらきがなくなっていき、いずれは透析を お受けになることということが予測できても、それをすこしでも 先延ばしできれば、と思いながら治療を行います。


この治療の大きな柱が食事療法です。

とりわけ、その中でもタンパク質の制限が重要です。

次に重要なのは、カロリー(エネルギー)をたくさん摂ることですから、 高カロリー・低タンパク食が、透析をなるべくさけるための食事として 指導されます。


これが、まず患者さんにとってつらいのです。

高カロリー・低タンパク食は、甘くて脂っこくなります。

お肉や魚が制限されますから、見た目にも舌にもさみしい食事です。

これに加えて、塩分制限がありますから、 ますます「つまらない」食事になります。


もちろん、患者さんだけでなく、ご家族も大変です。

高カロリー・低タンパク食は、メニューが単調になりやすく、 食欲が低下しやすいため、食事を作られる方の多くは どのような食事にしたら、楽しく食べられるのか悩んでおいでです。


肉体的にはどうでしょうか?

低タンパク食は、文字通りタンパク質が制限されているのですから、 やりすぎると、タンパク質が不足することになります。

高カロリー食は、たとえ糖尿病がなくても、余分なカロリーの摂取に 結びつく可能性があります。


このような食事をある程度長期間続けて、たとえ透析を 先延ばしにできたとして、それでお体に悪影響はないのか?

かえって、普通通りに近い食事をして、透析が早まったとしても、 結果的に、その方がお体にはよいのではないか?

実は、この答は、確実なものは出ていないのです。

このため、極端な高カロリー・低タンパク食には批判的な意見もあります。


たとえばですが、体重1kgあたり、0.6g(およそ一日に30g)というと、 相当厳しいタンパク制限です。

体重1kgあたり0.8g(一日に40g)くらいですと、まあまあ 食べるものがあります(それでもかなりさみしいですが)。


ここ数年、「Quarity of Life」を大切にする治療の重要性が強調されています。 この言葉は、一般的には「生活の質」と訳されますが、 私は「日常生活での満足度」と訳しています。

患者さんの満足度を考える必要があると思うのです。


ご家族からごらんになって、あまりに我慢を強いているようで、 満足度が低いようでしたら、主治医の先生と相談してみて、 食事制限をある程度ゆるめてみる、それで、腎機能が低下して、 透析をはじめるのが早まったとしても、それはそれで仕方がないだろう、 という、選択肢もあるのです。


もちろん、そこには血液透析の大変さはどのようなものか?

という問題があります。

血液透析は、楽に受けられる方と、大変な方の差が大きいので、 一概には申し上げられないのですが、 私たち透析医療に従事するものは、できる限り快適な透析をめざしています。


食事療法と血液透析のどちらが大変なのか、比較はできないのですが、 「それほど大変なものではないですよ」というのが、 透析医の「言い分」だと思ってください。


どのような方法がいいのかは、患者さんの日頃の様子をよくごらんになって、 主治医の先生とよいコミュニケーションをとることの中で、 決めていっていただきたいと考えております。


[回答日 2004/2/9]

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