top of page

透析Q&A

  • 執筆者の写真いい透析ドットコム

[Q109]虚血と体重、血圧の関係について教えて下さい。


 

[回答]


● 除水の概念


血液透析療法では、前回の治療終了時から、今回の治療までに 増えた体重を除水します。

文字通り、水分を除去するのであって、お肉をとろうというわけ ではありません。

わずか2-3日の間に何kgも「太る=肉が付く」というのは あり得ないことですよね。


ですから「透析間で増えた体重は、すべて水分である」と考えて、 「増えた体重分の水分を除去する」のです。


●除水の実際


除水量が多いとどうなるでしょうか?

たとえば4kgの体重増加があったとします。

すると、4kgの除水を行うのですよね。


除水は血液の中から行われます。

つまり血液透析では、血液から水分をしぼり出して(もちろん毒素も除去して)、濃くなった血液を お体にお返ししているのです。

ですが、4kgの水分のすべてが血管の中にたまっているわけではありません。

何%という正確な数値は個人差があるのですが、増えた水分のうち、 かなりの%は血管の外にあります。


仮にこの割合を50%としてみます。そうすると、4kg増えた場合には 2kgが血管の中にあり、2kgは血管の外にたまっているということになります。

この状態で、透析治療を行うと血管の中からだけ4kgの除水が行われます。

そうなると、血管の中は脱水になってしまいますよね。

そこで、血管の外にたまっていた水分が血管の中に引き込まれて、 脱水になるのを防ぎ、体全体の除水が終了するのです。


●除水における問題


ここで問題なのは、透析で除水されるスピードと、血管外から血管内に 戻ってくる水分のスピードとの差です。

もし、これが同じであれば、透析で除水されても、血管外からどんどん水分が 返ってきてくれますので、血管内は脱水にはなりません。


しかし、実際には血管の外から血管の中に水分が返ってくるのには かなりの時間がかかることが知られています。


また、このスピードには大きな個人差があることが知られています。

たくさん除水をすると、血圧が下がってしまったり、虚血症状が 出てしまうことがあります。


●虚血症状となる原因


虚血症状が出てしまうのは、この血管内脱水(血管外から血管内に 水分が戻ってくるのに時間がかかること)が、 大きな原因となっています。


安全な除水量はドライウェイトの4%(あるいは5%)以内と 言われています。

ドライウェイトが50kgの方では2kg以内(あるいは2.5kg以内)、 ドライウェイトが60kgの方なら2.4kg(あるいは3kg)以内ということに なりますね。

まずは、これを目安に水分制限を行っていただき、より安全な透析治療に なるように、努力をしていただきたいと思います。


なお、血管外から血管内への水分移動を早くするための治療薬が あって(グリセオールなどと呼ばれているクスリです)、特に害もないので 使用されることがありますが、水分制限をして体重が増えないように 心掛けることに勝るものではありません。


[回答日 2005/5/24]

関連記事

[Q381]なぜ、動脈チャンバより静脈チャンバの方が長いのですか?

[回答] ●動脈チャンバと静脈チャンバ、どちらが長い? なるほど、静脈側のチャンバの方が長い回路が多いようですね。 ですが、一般的にはご質問にもありますが、静脈側チャンバの方が長くて容量が大きくなっています。 日本臨床工学技士会が、2012年に発表した透析回路の標準化基準でも静脈側チャンバの方を大きくしていますね。 しかし、すべての回路がそうなっているわけではありません。 動脈側チャンバと静脈側チ

bottom of page