[回答]
● 除水の概念
血液透析療法では、前回の治療終了時から、今回の治療までに 増えた体重を除水します。
文字通り、水分を除去するのであって、お肉をとろうというわけ ではありません。
わずか2-3日の間に何kgも「太る=肉が付く」というのは あり得ないことですよね。
ですから「透析間で増えた体重は、すべて水分である」と考えて、 「増えた体重分の水分を除去する」のです。
●除水の実際
除水量が多いとどうなるでしょうか?
たとえば4kgの体重増加があったとします。
すると、4kgの除水を行うのですよね。
除水は血液の中から行われます。
つまり血液透析では、血液から水分をしぼり出して(もちろん毒素も除去して)、濃くなった血液を お体にお返ししているのです。
ですが、4kgの水分のすべてが血管の中にたまっているわけではありません。
何%という正確な数値は個人差があるのですが、増えた水分のうち、 かなりの%は血管の外にあります。
仮にこの割合を50%としてみます。そうすると、4kg増えた場合には 2kgが血管の中にあり、2kgは血管の外にたまっているということになります。
この状態で、透析治療を行うと血管の中からだけ4kgの除水が行われます。
そうなると、血管の中は脱水になってしまいますよね。
そこで、血管の外にたまっていた水分が血管の中に引き込まれて、 脱水になるのを防ぎ、体全体の除水が終了するのです。
●除水における問題
ここで問題なのは、透析で除水されるスピードと、血管外から血管内に 戻ってくる水分のスピードとの差です。
もし、これが同じであれば、透析で除水されても、血管外からどんどん水分が 返ってきてくれますので、血管内は脱水にはなりません。
しかし、実際には血管の外から血管の中に水分が返ってくるのには かなりの時間がかかることが知られています。
また、このスピードには大きな個人差があることが知られています。
たくさん除水をすると、血圧が下がってしまったり、虚血症状が 出てしまうことがあります。
●虚血症状となる原因
虚血症状が出てしまうのは、この血管内脱水(血管外から血管内に 水分が戻ってくるのに時間がかかること)が、 大きな原因となっています。
安全な除水量はドライウェイトの4%(あるいは5%)以内と 言われています。
ドライウェイトが50kgの方では2kg以内(あるいは2.5kg以内)、 ドライウェイトが60kgの方なら2.4kg(あるいは3kg)以内ということに なりますね。
まずは、これを目安に水分制限を行っていただき、より安全な透析治療に なるように、努力をしていただきたいと思います。
なお、血管外から血管内への水分移動を早くするための治療薬が あって(グリセオールなどと呼ばれているクスリです)、特に害もないので 使用されることがありますが、水分制限をして体重が増えないように 心掛けることに勝るものではありません。
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