[回答]
透析治療に対して、このような話は今でも時々耳にします。
私たち透析医療に従事するものが、きちんと説明をしたり、 情報を公開することを怠っていたためもあるのでしょうけれど、 この口コミで拡がる「透析はダメ」は本当に根強く、我々を困惑させます。
もし、腎機能が悪化して透析が必要になった状態でも治療を お受けにならないでいると、2つのことが生じる可能性があります。
1つめは、水分がお体にたまってしまうための症状です。
飲んだり食べたりして体に入っている水分は、オシッコとして体外に排泄されます。
腎臓が悪くなると、オシッコの量が減ってくることがあり、そうなると体に水分が 蓄積することになります。むくみがでるようになりますが、むくみだけであれば それほど深刻ではありません。
問題は、肺に水がしみ出てくることがあり、これを「心不全」と呼んでいるのですが、 非常に強い呼吸困難の症状があり、ご本人も大変苦しいものです。
急いでお体からよけいな水分を除去する必要があります。
2つめは、血液の中に老廃物がたまってしまうために出てくる症状です。
「尿毒症」と呼ばれています。
全身がだるくなり、食欲がなくなります。胃が悪くなくても吐く方もいらっしゃいます。
貧血が強く、場合によっては血液が固まりにくくなるため、出血する方もいます。
かゆみが出たり、不眠を訴える方がいらっしゃいます。
さらに病状が進むと、意識障害を起こしてきます。
透析を始める時期ですが、早ければ早いほどいいというわけではありませんが、 自覚症状が出現する前には始めたいと、私たち腎臓医は考えております。
ただし、自覚症状がないのですから、ご本人の同意は得られにくいという 難しい状況でもあります。
私たち医師の勧めに応じてくれて、自覚症状が出現する前に透析治療を始められた方は その後の経過も良好なことが多いことは、よく経験されます。
ただし、「自覚症状が出てからだと助からない」というわけではありません。
「心不全」にしても「尿毒症」にしても大変つらい症状ですから、 そのような症状が出てしまえば透析治療に同意をされるかも知れませんが、 そうなる前にお考えを翻して、透析を受け入れてくださることを願うのみです。
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