(質問のつづき)
技士の方に質問をしてみると「後々低血圧になって除水が出来ず残す事にならないように、 血圧が高めで安定している始めの方に除水を多く設定している」 という返答でした。 1時間あたりの除水量って少ない方が血圧低下を 起こしにくく、体に優しいのではないでしょうか?
[回答]
●コミュニケーションの大切さ
まず、スタッフにしっかりとご質問をなさっていること、 スタッフの方もしっかりと説明なさっていることは、 とても素晴らしいことだと思います。
これからも、よりよいコミュニケーションで すこやかな透析ライフをお過ごしください。
●プログラム除水という方法があります
さて、ご質問へのお答えですが、これは必ずしもそうは言えません。
普通に考えると、4時間の透析であれば、4時間すべての時間で ゆっくりと除水をした方が体への負担が少ないように思われますよね。
これを「均等割」と呼んでいます。
ですが、あなたが透析を透析をお受けになっている施設のやり方のように 最初のうちに除水を多くかけてしまい、後半では除水速度を落としたり あるいは除水しなかったりする方が、血圧が下がりにくく心臓への 負担も少ないことがあるのです。
このような除水の仕方を「プログラム除水」と呼ぶ言い方もあります。
●プログラム除水のメリット
なぜプログラム除水の方が血圧が下がりにくいのかは、 なかなか難しいのですが、次のような説明がなされています。
透析の後半になると尿毒素の除去が進んで、血液の(正確には血漿の) 浸透圧が低下してきます。
そうすると、血管の外に逃げていた水分を血管の中に引き込む力が 減ってしまいます。それで、透析後半は、血管の中が脱水、血管の外は まだ水分が残っているという状態になりやすいのです。
このため、血漿浸透圧の高めな透析前半で除水を行う方が スムーズに水分を除去できるのです。
ナトリウムやブドウ糖を入れるのも、同じような考え方で 血漿の浸透圧を上げることによって、血管外の水分を血管内に 呼び戻そうとしているのです。
●均等割とプログラム除水のどちらが優れているのか
さて、私の経験では、均等割の方が透析中の血圧が安定する患者さんと プログラム除水の方が快適だと言う患者さんとがいて、どちらの方が 優れたやり方だ、ということはないように思われます。
それで、私どもの施設では、基本的には均等割で除水をするように 設定し、そのやり方では透析の後半に血圧が下がってしまい、十分な 除水ができない時にプログラム除水を検討するようにしています。
一般的にプログラム除水が適しているのは、体重増加が多い方ですので、 除水量が少ない=体重増加の少ない方では、 どちらの除水の仕方でもよいと考えます。
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