(質問のつづき)
通常シャントを作れない場合の方法と認識していますが、 シャントを作れない理由やこのアクセスの維持管理及び 起こりる合併症について教えて頂きたく宜しくお願い致します。
[回答]
ご高齢の透析患者さんが増えてきて、老人ホームから透析に 通院される方も増加しています。
透析というあまりなじみのない医療分野のことで ご不明の点も多いと存じますが、よろしくお願いいたします。
●上腕動脈の表在化術について
上腕動脈の表在化術は、現在はあまり見られなくなりました。
私も10年くらい前まではよく手術をしていましたが、 最近はシャント手術がメインで、ここ何年か表在化手術は 行っておりません。
動脈の表在化が少なくなってきたことにはそれなりの要因が ありますが、この手術が選択されるには、 次のような理由があります。
(1)静脈の状態から選択される理由
シャントを作るためには、ある程度太い静脈が必要ですが、 患者さんによっては細い静脈しかない、あるいは、表面から見ると 針を刺すことができるような静脈が見えない、という場合があり、 動脈の表在化が行われることがあります。
(2)心機能の問題から選択される理由
心機能が相当悪い患者さんの場合は、表在化が行われることがあります。
シャントは、それほど極端ではありませんが、多少なりとも心臓には 負担となるからです。
だいたいは、この2つのうちのどちらかが表在化の理由だと 推測されます。
●アクセスの管理方法について
アクセスの管理ですが、通常のシャントと比較して 次のような注意点があります。
(1)止血に時間がかかることがあります
シャントと比べると、止血に時間がかかることがあります。
血流の豊富な動脈に直接針を刺すために、止血が難しいと考えられています。
もちろん止血は透析施設で行ってくるものですが、たとえば止血バンドを したまま帰ってくるようなことがあるとすれば、 そのバンドを外すまでの時間は長目の方がいいかもしれません。
圧迫しすぎて血流が止まってしまう可能性は、表在化の方が少ないです。
(2)動脈がコブのようにふくらんでくることがあります
針刺しを繰り返しているうちに、動脈がコブのようにふくらんで 「動脈瘤」を作ることがあります。
上腕動脈ですから、動脈瘤ができると、目でみてわかります。
いきなり破裂することはありませんが、もし破裂すれば大出血と なりますから、コブが大きくなるとその動脈には針を刺すことは断念して、 次のアクセスを作ることを考慮します。
(3)バイ菌が入らないように注意してください
感染をすると致命的になることがあります。
バイ菌が入ることが原因ですから、その部位が熱をもって赤く腫れます。
これも、ほとんどの場合、目で見てわかります。
●ケアなさっている方々にお願いしたいこと
ホームでのアクセス管理としては、ケアなさっている方々に、 よく観察をしていただくことが大切かと思います。
ですが、アクセス管理の責任はもっぱら透析施設にありますから、 それほど神経を使っていただくことはないかとも考えます。
もしホームで動脈の穿刺部位から再出血をしたときですが、 基本的には手指で圧迫していただくことが真っ先の対処となります。
もちろん、血液に触れないようゴム手袋などを用いて下さい。
上に書きましたように、止血が難しいことがありますので、 圧迫しながら透析施設に連絡をしていただいた方が確実かと思います。
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