(質問のつづき)
例えば「中2日で1.5kg体重が増加し、このうち、100gは腹水の量の増加によるという状態」だったとします。そのためにドライウエイトに戻すために透析治療で1.5kgを抜いた場合、腹水は抜けていないので結局100g余分に引いた状態になると思うのです。実際にはこのような計算になるのでしょうか。
[回答]
●ご質問の状況を整理してみましょう
もし、ご質問にあるような状態が生じていて、毎回、透析治療で100gずつ余分に除水をしていると仮定しましょう。
すると、月の平均透析治療回数が13回ですので、
1ヶ月で、100g×13回=1.3kg
も余分に除水をしてしまうことになります。
それでは脱水になってしまいます。
また、増加のうちの100gは腹水だと判断をして、増加分よりも毎回100g除水量を減らすとすると、毎回100gずつ腹水はたまり続けてしまいます。
1ヶ月で、100g×13回=1.3kg
の腹水が増えてしまうことになります。
しかし、実際にはそのようなことは生じません。
●増加した分の水分は血管の外にもれてたまることも
ご質問にある例のように、1.5kg体重増加した場合、その1.5kg分の水分が血管内にたまっていることはありません。
正確な割合はわかりませんが、一部は血管の外にも水分がもれてたまります。
たとえば、「むくみ」は血管の外にもれて出てきた水分です。
腹水もこれに含まれます。
●透析治療をすると体内の水分はどうなるのか
透析治療で除水をすると、血管内の水分が除去されます。
1.5kgの除水をすると、血管内から1.5kgの水分が除去されますから、血管の中が脱水になります。
血管の中が脱水になると、血管の外に漏れ出ていた水分が血管の中に戻ってきます(これを「リフィリング」といいます)。
ですから、透析治療で除水をした後に、むくみがある方の場合は、そのむくみがとれてきます。
●透析治療をすると肝硬変による腹水はどうなるのか
上記と全く同じ仕組みが働いてくれれば、腹水も除水により取れてくれることになるのですが、肝硬変による腹水の場合は、むくみとは違って、腹水をためる力が働いてしまっていることが多いのです。
この腹水をためる力の原因は、血液の中のタンパク質が減少することと門脈という血管の中の圧力が高くなってしまうことです。
ですから、血管内が脱水になっても、腹水はなかなか血管の中に戻ってきてくれません。
そのために、ご質問にあるように100gのすべてが腹水のまま残ってしまうことはないとしても、
100gのすべてが血管内に戻ることもないので、腹水はだんだん増えてきてしまうことがあるのです。
●腹水のある方の除水設定は難しい
このように、腹水のある方が血液透析をお受けになる場合の除水設定は、なかなか難しいものであることをご理解いただけるものと思います。
体重増加分の除水を行わないと腹水が増えてしまいますから、除水はきちんとお受けになってください。
それでもなお、腹水が増えてきてしまうことがありますので、その対処については、主治医の先生とよく相談をしながら、治療方針を決めていっていただきたいと存じます。
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