(質問のつづき)
透析施設では、心電図やレントゲンで定期的に検査しないのでしょうか。また、患者に皮膚が痒いなど合併症と思われる症状があっても対処しないのでしょうか。
[回答]
●定期的に検査をすべきである理由
私の知る範囲では、定期的にレントゲンと心電図をチェックしない透析施設はありません。
透析治療が必要なくらい腎臓が悪くなった方は、とても残念ですが、心臓や血管の合併症が生じやすいことが知られています。
これらの異常を早く見つけて、必要があれば治療を行うことが大切です。
たとえば、日本透析医会が発表しているマニュアルには、レントゲンと心電図の両者を月に1回ずつ行うよう書かれています。
透析医療では日本のトップクラスのある病院のマニュアルを拝見させていただいたことがありますが、この病院が発表しているマニュアルでは、年に2~3回、心電図は毎月チェックすることになっています。
このことからわかるように、レントゲンや心電図をどのくらいの間隔を開けて行うかは日本全国で統一されているわけではありません。
しかし、「定期的に検査をすべきである」という点では一致しています。
もちろん、ご家族の主治医の先生には先生なりの方針があるものと思いますが、これらの検査を行わないというのは、奇異な感じがします。
●自院で皮膚の痒みについての対処をしています
私たちの医療施設では、自院でできる限りの対処をします。
例としてあげていただいた痒みですが、透析を行っている方には、とてもよく見られる合併症の一つです。
透析治療・透析医療は、ある意味でこれらの合併症との戦いです。
透析という治療は、それ自体はとてもシンプルで、尿毒素を除去して、余計な水分を除去することが主なものですが、これらは、設定は人間が行いますが、多くは器械が行ってくれます。
そして、器械(人工腎臓)の進歩はめざましく、尿毒素の除去もとてもよくなっています。
●医療スタッフの力が大事になる合併症対策
それでは、透析に従事する医療スタッフの仕事は何でしょうか?
その多くは、合併症対策です。
動脈硬化など生命に関わる合併症から、命を脅かすものではないにしても、患者様を苦しめる痒みや不眠など、さまざまな合併症に対応していくのが、透析医療にたずさわる者の大事な仕事です。
もちろん、他の病院の応援を求めることはありますが、痒みに関しても、できるだけ自院で対策を講じて、それでもうまく症状がおさまらない場合に、皮膚科に紹介をさせてもらうという段階を踏んでいくことが多いと思います。
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