(質問のつづき)
透析関連の書籍等でも透析後の運動療法は控えるようにと記載されています。 透析後に運動を行うにあたり注意点等を教えてください。
[回答]
理学療法士として運動療法を専門にされている方に、医師である私がお答えするのは不十分かも知れません。
その点をお含みおきください。
●当法人での運動療法の取組について
透析をお受けになっている方の運動療法は、可能であれば、毎日行いたいと考えております。
したがって、私たちの透析施設の中には、理学療法士の協力を得て、透析治療前後にはストレッチやエルゴメーターなどを行っています。
また、透析治療中には、やはりエルゴメーター(透析中の場合は機械的にアシストされている「ルームマーチ」を使っています)と、チューブトレーニングを行っています。
つまり、透析後でも(アシスト無しの)エルゴメーターで運動療法を行っている方がいらっしゃいます。
●血圧低下には十分注意を
透析治療後の運動療法での注意点ですが、透析治療により血管内が脱水になっている方が少なくありません。
血圧低下には十分に気をつけてください。
運動により不整脈が誘発される患者さんがいますので、モニターをつけるのは現実的ではないとしても、運動療法前後の検脈は全例に行って下さい。
●運動強度の目安
運動強度は「楽~ややきつい」としていますが、透析治療後であれば「ややきつい」ではやり過ぎかも知れません。
「楽」から始めて、時間をかけて運動強度を上げて行ってみてください。
ボルグスケールは厳密なものではありませんが、11-12程度といったところでしょうか。
●特にシャント側の上肢の運動に注意を
運動療法によって、シャント血管に圧力がかかると、シャントから再出血をすることがあります。
上肢の(特にシャント側の)運動には十分に気をつけてください。
●すべての透析患者さんに適応になるわけではありません
すべての透析患者さんに透析治療後の運動療法が適応になるわけではありませんので、心機能などが問題ないのか、透析後の運動療法に耐えられるかなど、個々の患者さんについての指示やアドバイスは、主治医の先生と相談をしながら決めてみて下さい。
●より安全で効果的なものに
上に書きましたように、透析後の運動療法は必ずしも禁忌とならないと考えています。
たとえば、透析後に帰宅してから犬の散歩に出かける患者さんにその散歩を禁止しませんよね。
理学療法を専門にされる方がアドバイスをされながらの運動療法であれば、より安全で効果的なものになると期待しております。
ぜひ取り組みを継続してみて下さい。
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