(質問のつづき)
また血液透析では腹膜の役割は何が果たしているのでしょうか?
[回答]
●腹膜透析の原理について
腹腔内(おなかの中の透析液をいれるスペースですね)は、なめらかな腹膜という膜で包まれています。
この腹膜のすぐ外側(透析液と反対側)に毛細血管が走っています。
透析液が腹腔内に入ると、毛細血管を流れる血液中の老廃物(尿素窒素やクレアチニンなどがその代表です)やカリウムが、毛細血管の壁を通り抜けて、腹膜も通り抜けて透析液の中に染み出してきます。
また水分も、透析液の方が浸透圧が高いために、同じ経路を通って染み出してきます。
ですから、水分にしても老廃物にしても毛細血管の壁と腹膜の両方を通り抜けて腹腔内に到達するのです。
●腹膜、毛細血管のどちらが適当な言葉か?
腹膜透析の原理を考えた場合、「腹膜を使用している」と言うのが正確なのか「(腹膜にある)毛細血管を使用している」と言うのが正確なのかは難しいのですが、私は腹膜を使用していると言う表現がいいのではないかと考えています。
その理由としては、腹膜透析を長期間続けていると、老廃物の除去が少なくなってしまったり、除水が困難となってきたりしますが、これは毛細血管に変化が生じたのではなく腹膜が透析液などの刺激によって厚くなることによるからです。
腹膜硬化症などと呼ばれますが、腹膜に変化が生じて、透析ができなくなることから、透析では腹膜を使用しているという表現がすっきりするように思われます。
医学的・専門的にも、腹膜を使用した透析という表現がなされます。
もちろん、毛細血管も重要な働きをしています。
●血液透析の原理について
他方、血液透析の場合には、血液を体外に導き出して、器械(ダイアライザーと言います)によって、直接血液から尿毒素や水分を除去します。
腹膜透析の場合は腹膜を(あるいは腹膜の毛細血管を)使用しているわけですが、これと同じ役割を果たしているのは、血液透析ではダイアライザーと言うことになります。
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