いい透析ドットコム
[Q551]薬学生です。服用している薬を見て透析前あるいは透析中と判断をつけるポイントはありますか?何の薬を飲んでいれば透析中あるいは透析前でしょうか?
[回答]
どのような薬であれ、服用のタイミングを決めるのは医師の仕事で、かつ医師の責任です。
例えば、一般的に食後の薬であっても、医師が「食前」と指定して処方すれば食前の服用になります(ホントにそれで間違いないか、薬剤師さんがチェックしてくれますが)。
ですので、薬を見ただけで、その薬をどのタイミングで飲むのかを判断(推定)するのは難しいことです。
それをご承知いただいた上で、以下の回答をお読み下さい。
(1)昇圧薬
血液透析は除水などの影響で治療中に血圧が下がりやすく、過度の血圧降下は治療の妨げにもなります。
その血圧下降を防ぐために、透析前(透析日の朝食後や来院して透析の始まる前)に昇圧薬を服用する患者さんがいます。
また、透析治療の後半に血圧が下がり、透析前の服用では薬効が切れてしまう患者さんもいて、その場合は、透析開始2時間目などの透析中に服用してもらうこともあります。
具体的な昇圧薬は、
アメジニウム(先発品の商品名:リズミック)
ドロキシドパ(同:ドプス)
ミドドリン(同:メトリジン)
などです。
(2)降圧薬
上の昇圧薬と反対になりますが、患者さんによっては透析治療を開始すると血圧が上昇する方がいらっしゃいます。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が賦活されるからだと考えられています。
こういった患者さんの多くは、普段から(透析日にも透析日以外にも)降圧薬を服用していますが、透析中に普段よりも血圧が上昇してしまう場合には、透析前に降圧薬を追加することがあります。
降圧薬には何種類もありますが、私はカルシウムチャンネルブロッカー(ニフェジピン徐放剤、先発品の商品名:アダラートCRなど)を処方しています。
(3)抗血小板薬
血液透析では、血液がダイアライザーや回路の中を通過します。
この際に、異物に触れることが刺激になって、血液が凝固しやすくなります。
この凝固を防ぐために、抗凝固薬であるヘパリン(注射薬)を血液回路に持続注入します。
多くの場合は、このヘパリン投与でダイアライザーや回路内の凝血を防ぐことができるのですが、患者さんによってはそれでも血液が固まる方がいらっしゃいます。
そのような場合には、透析前に抗血小板薬のアスピリンを服用していただくことがあります。
効果が早く出るように、「かみ砕いて服用」という指示を付記することもあります。
なお、虚血性心疾患や脳梗塞の既往がある方でも抗血小板薬を服用していただきますが、この場合には透析日と非透析日で服用量を変更することはほとんどありません。
参考になったでしょうか。
薬学部の勉強も大変だと思いますが、がんばって下さい。