[回答]
●血液の流れについて
人工血管だけではありませんが、血管の中では血液は一定方向に流れています。
たとえば、標準的なシャントだと手首から心臓に向けて血液が流れています。
その一定方向のうち、手前側(上流側)に動脈の針を刺し、心臓側(下流側)に静脈の針を穿刺します。
●シャント循環について
この動脈と静脈とを反対に刺してしまうとどうなるでしょうか?
下流側に動脈の針を刺してしまうと、そこから血液をとってダイアライザーに通します。
尿毒素を除去して、除水も行われた血液が上流側に刺した針を通じてお体に戻ってきます。
この血液は血管(人工血管)を流れて、また動脈の針からダイアライザーに流れていって、さらに再び静脈の針から上流側に返っていきます。
このように、
「毒素を除去してきれいになった血液が何度もダイアライザーを通過」
そして
「ダイアライザーを通ってほしい毒素が含まれている血液がダイアライザーを通過しない」
という状態になります。
このような状態を「シャント循環」と呼ぶこともあります。
●シャント循環が起きるとどうなるか
シャント循環が起きてしまっても、毒素が全く除去できないということはありません。
その方のシャントにどれくらいの血流が流れているかにもよりますが、通常の透析の7割程度は毒素の除去ができているものと思われます。
ですが、尿毒素の除去が悪くなるわけですから、シャント循環は避けなければなりません。
私たち透析医療に従事する者は、動脈と静脈との回路の接続を間違わないように気をつける必要があります。
なお、シャント循環を起こしても除水は設定通り行われます。
また、上にも書きましたが、シャント循環は人工血管だけではなく、自己血管を用いたシャントでも起こることですので注意が必要です。
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